時を刻まない時計　

その針は、時を刻まない。

スプリングドライブを搭載した腕時計の秒針は、時を「刻む」のではなく、ダイヤルの上をなめらかに回る。「時は移ろい流れる」という日本の美意識を表現したスイープ運針は、ぜんまいの力で動く針に1秒間で2の8乗（256）回、磁力でブレーキをかけ速度調整する。スプリングドライブの象徴的な機構だ。

上記はグランドセイコーのセールスコピーの文章である。私の部屋には長らく古いゼンマイで巻く時計が鎮座している。ドイツのヘルムレだと思うが？月カレンダーも付いている。

ゼンマイを巻かないといつの間にか止まっている。それは当然の事で、毎日決まった時間にゼンマイを巻けば良いのだが！

私は自営業で曜日の感覚や時間の感覚が、普通の方とは少しずつズレてしまっている様だ。日曜日だから今日は休みとかと言う感覚は無い。

現在髪はショートにしているが、ひと月ぐらいすると何故か鬱陶しくなる。その時に時間の流れを感じるのである。

90歳や100歳と長生きの方も多いが人間の一生は、長い様で短い。この年になってそれを実感している。父は60代で亡くなっている。養子として立派に人生を真っ当した。

私の家系は親戚も養子が多いのである。血筋を絶やさない為、家の為に生きている人が多い。

彼らはひと針ひと針、時を刻んで生きている。私も同じくその様にして生きて行きたい。

カッコよく、滑らかに流れる様な時を過ごす事は出来ていない。亡くなる時だけ、走馬灯の様に私の人生の思い出が脳裏に流れる様であれば良いと思っている。

ひと月前の堀江貴文のYouTubeで彼は今の時代は行動力だと明言している。何も考えずに行動する人間、ボンクラは危なっかしいから人が付いて来ると言う。

行動力のある人間はボンクラでも人を出し抜くと話している。私は以前はそのものズバリだった。多くの人の協力の元私の生活は成り立って来た。今も何十年と長い付き合いのブレーンが多い。

堀江さんの言う事は正しいと感じるが、人を出し抜く人間は日本人の感性では無いのである。その様な人間を多く見ているが、最後には孤独で誰からも愛されない末路が待っている。

資本主義の海に流されている人間の危険な思想である。動かない時計でも私は愛着を感じる。生き方が下手な人や謙虚な人以外は、最終的には長い付き合いはしていない。

柴田恭兵「RUNNING SHOT」